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尾木ママにもわかってほしいデザインのトレースとオマージュとデザインソースのちがい

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尾木直樹(尾木ママ)さんの「なぜデザインの「トレース=盗用」ではないの?!デザイン界のモラル教えて」という記事を読んで、聞かれてもないけど答えます。

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コピーはダメだけどトレースはいいの?

い い わ け な い よ !!

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トレース (trace) は、すでにある物をなぞること。またはなぞるべき痕跡のこと。
出典:Wikipedia

ここでいう「トレース」とは「そっくりそのまま写し取る」こととします。この世に存在する、写真、イラスト、映像、建築物…etcには全て「著作権」が存在します。それをコピーだろうが、トレース(なぞる)だろうが、「自分に著作権がある」もしくは「使用を許可された」もしくは「著作権が消滅した」もの以外は絶対ダメです。盗用です。

先日佐野研二郎さん制作のトートバッグに「デザインのトレース」という問題が見つかり、そのことは謝罪されトートバッグも取り下げとなりました。ご自身も認めて謝罪し、経緯を説明されています。しかし、尾木ママさんは「トレースはいいじゃないか」というような見解を散見したと書いてらっしゃいます。憶測ですが、それは「デザインは必ずしも100%オリジナルの必要はない」「他のデザインを参考にすることもある」というような意見だったのではないかと思います。

では100%オリジナルではないというのはどういうことでしょうか。

オマージュとデザインソース

例えばこんなイラストを描いてみました。

ベビーロード

どこかで見たような、と思ってもらえたらうれしいです。あの有名アーティストのアルバムジャケットの「オマージュ」です。既存のもののアイデア、構図、形、何らかを「取り入れて(真似して)」できるものです。イラストはわたしが描いたものですが、構図やアイデアは既に存在するものです。

オマージュ: hommage[※ 1])は、芸術文学においては、尊敬する作家や作品に影響を受けて、似たような作品を創作する事。また作品のモチーフを過去作品に求めることも指す。しばしば「リスペクト」(尊敬、敬意)と同義に用いられる。ただしフランス語として使う場合は他の単語と組み合わせて「尊敬を込めた作品」の意味で使われることが多く、hommageだけでは「尊敬、敬意」の意味だけになる。
出典:Wikipedia

明確な「オマージュ」でなくても、他のデザインやものの形や色からヒントを得て、自分のデザインにすることはよくあります。そういうヒントになるものを「デザインソース」と呼んだりします。例えば上のイラストも、赤ちゃんの形の参考に他の写真を見ながら描きました。「参考にする」「発想の源にする」というのはデザインする上ではよくあることです。

これは個人的な感覚ですが、「オマージュ」「パロディ」は「みんなが元ネタを知っていて初めて成立するもの」だと思っています。誰も知らない、けど素晴らしいものを真似して自分のものにしてしまおう、というのはデザイナーとしてあまり尊敬されたことではないと思います。

例えば芸人Aさんが、芸人Bさんの真似をして笑いを取ったとします。見る人が「これはBさんのネタだ、Aさんおもしろいな」と思われたらBさんは何とも思わないでしょう。しかし「これはAさんのネタか、おもしろいな」と思われたら芸人Bさんは悲しいでしょうし、怒るでしょう。

モラルは個人個人持ち合わせるものですが、わたしの場合はそう思っています。

そもそもデザインは世界で唯一無二ではない

「デザイン」ということばは、あまりに広義でひとまとめには出来ませんが、デザイナーがみんな世界で誰も見たことの無いようなオリジナルのものを目指しだしたら世の中は大変です。誰も読めない新聞に開け方のわからないドア、家電製品のボタンは全部バラバラ、袖口が20個もあるTシャツ、少なくともわたしは着たくないですね。

デザインは山にこもって滝に打たれてある日突然生まれるものではありません。作る意図・ターゲットなどコンセプトを詰めて、日頃から見てきた美しいもの優れたもの、これまでの経験、そういうものを組み合わせて「作る」ものです。

「理解できる」「美しいと思う」「使いやすい」には「いくつかの正攻法」というものがあります。ものの形や色使いが似てくるのはよくあるはなしで、デザイナーからすると「明確なトレース・盗用ではないのに似ていることがなぜそんなに問題なのか?」と思ってしまうところもあります。

しかし、コンセプトがあればどんなものでもいい、御託を並べて説き伏せよう、というわけではありません。誰もが見て「いい」と直感的に思えるようなものをデザイナーとしては目指しています。

パクリって誰が決めるの?

「トレースは絶対ダメ」といいましたが、発覚して即罪になるわけではありません。「著作権侵害」は「著作者」が権利を侵害されたとして訴え、裁判所で判断されて初めて罪になります。

訴える、訴えないは個々、ブランドや会社ごとの判断です。大変労力を伴うものなので、そこに至らないケースもあると思いますが、それでも「罪」として裁判所から判断を受けていない段階で、「泥棒」という表現はあまりに重いのではないかなと思います。

まとめ

「トレース」と「オマージュ」と「デザインの参考」は別
「他のものと似ている」と「俺が気に食わねえ」は別
「トートバッグ問題」と「五輪エンブレム問題」は別

尾木ママさんはひとつ前の記事で「デザインのトレースは泥棒。人の車盗んだも同然!本人に謝罪無しとは…」と書いていらっしゃいました、それが次の記事で「わからないことを教えて」という姿勢に変わってらっしゃるのはとても素晴らしいなと思います。デザインを志す子ども達のためにも、たくさんの意見をご覧になっていただきたいと思います。

みなさんこれからも良いデザインを!

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