8/16(土)に京都で行われた「なりゆきサーカス」さん主催の「第2回 なりゆき寺子屋」に参加させていただきました。たくさんの本の装丁を手がけられている横浜のwelle design坂野さんが講師となり、イラストレーターたちの質問に答え、課題を講評するというとても実践的な勉強会でした。なりゆきサーカスさんのページでこのイベントを知り、すぐにScoobでも掲載させてもらいましたが、あっという間に満席という盛況ぶり。普段web系のイベントでは得られない、刺激や気付きをたくさん頂いた日になりました。
どんなイベント?
- 前半 : 講演 「イラストレーターとデザイナーの本音通信」
- 後半 : 講評会 「装画探究」
前編は坂野さんへの質問大会で、事前に集められた質問について答えてくださるという進行でした。やはり気になるのは、「営業、お金、どうやって仕事に繋げるか、そのために必要なものは何か」というもの。突っ込んだ質問では「坂野さんがイラストレーターならどこに営業に行きますか?」という質問があり、秘密ですよと前置きしつつも真摯に答えてくださったりもしました。印象に残った答えは
- 自主制作より、タダでもいいから仕事の実績があった方がいい
- イラストのテイストがたくさんあるのなら分けて見せた方がいい(器用貧乏に見える)
- 営業をかけるなら手当たり次第ではなく好きな本の奥付を見るといい
- 忙しいからと断られても「ご都合のいい時間はありますか」と食い下がる道を持っておく
- 女性向けはとても求められるテイスト
- 奇跡の一枚は掲載しない方がいい(クオリティを一定に保つ努力を)
こうして見てみると、webデザインの世界でも同じようなことが言えるなと感じました。やはり「人対人」の仕事であると感じます。本の装画に限った話もありましたが、「数多いるイラストレーターからどうやって選ばれるか」というお話はフリーランスのじぶんには、とても響くものでした。
後編は予め制作課題が出されていて
- 「迫りくる自分」 似鳥鶏 著(光文社) - 近作のミステリ小説
- 「架空列車」 岡本学 著(講談社) - 近作の純文学作品
- 「潮騒」 三島由紀夫 著(新潮社) - 古典名作
この課題図書から好きな本を選び、文庫本のカバーイラストを描くというもの。わたしは「潮騒」を選び、期日1週間前には読み終わって描く時間もあったのですが・・・・まさかの提出できず。はじめて本の装画というものについて考えてみるとその重さにびっくり、深く悩みすぎてしまいプロはいつもこんな重圧の中でお仕事されているのかとこれまで以上に尊敬の念が…しかし当日皆さんの作品を見て、じぶんの考えがあまりに凝り固まって小さくなっていたことを感じました。画材や表現するシーンのセレクトなど皆さん本当に自由で、それでいて「この作品をどう感じたか、どんな人に読んでもらいたいか」という思いはしっかりあって、イラストレーターさんのプロ意識をビシビシ感じました。
で、今さら描きました
描けなかったときは「悔しい悔しい」と思うばかりでしたが、イベントを終えることには「描きたい描きたい」に代わり、坂野さんが講評で仰っていたことや、他の方のイメージの取り上げ方を参考に浮かんだイメージがこちら。
“『潮騒』(しおさい)は、三島由紀夫の10作目の長編小説。三島の代表作の一つである。三重県鳥羽市に属する歌島(現在の神島の古名)を舞台に、若く純朴な恋人同士の漁夫と海女が、いくつもの障害や困難を乗り越え、成就するまでを描いた純愛物語。古代ギリシアの散文作品『ダフニスとクロエ』に着想を得て書かれた作品である。(引用:Wikipedia)”
この本でとても力強い「生」と健全な肉体を感じました。主人公新治の母とヒロインの初江が、海女として勝負するというシーンがあります。その勝負の結末は作品の流れとしてとても大切なもので、そのシーンを思い浮かべながら描きました。目を惹く色使いをとアドバイスされていたのを念頭に、肌色が多くなってしまうモチーフでもなるべく色を多く濃く、若々しい雰囲気になるように考えました。後から作る意味があるだろうかとも思いましたが、次の機会のために形にしました。
ちなみにこの絵は最近取り組んでいる「グリザイユ画法」 というのをヒントに描いています。これは近々別記事でまとめたいので詳しくは割愛しますが手順としては次のようなものです。
色を選ぶのが下手で、決めうちで色を置きながらブラシやテクスチャにも気を配って…というのがあまりにも大変なので、一度グレーで大まかに完成させて、その後で色を置いていくというのが考え方です。かえって時間がかかることもありますが、割と修正が柔軟で色も変更しやすいのでここしばらく取り入れています。
為になるリンクと雑感と
- 第2回 なりゆき寺子屋 | welle design(講師の坂野さん)
- なりゆき寺子屋 第二回 “Welle Designの坂野さんがやって来る”レポ|なりゆきサーカス(主催)
- 装丁の夏! (その2)|ニキニキ -blog-
- 潮騒 装画イメージ|sign from snuf
- 第二回「なりゆき寺子屋」に参加してきました。|リリヤン
- なりゆきサーカス寺子屋に参加しました|nunotomono
- 【第2回 なりゆき寺子屋】welle designの坂野公一さん上洛|NoTE
- なりゆき寺子屋|空 色 帖
- 第2回「なりゆき寺子屋」に参加させて頂きました★|ウチュウ犬地球観察日記
イベントに参加されたイラストレーターさんのブログはこちら(9/1時点)
会場は京都の旧小学校校舎という「寺子屋」にぴったりのロケーションで、こだわって作られたイベント感がとてもすてきでした。「なりゆきサーカス」さんはプロイラストレーターさん6名の自主活動の場ということで他にもたくさんのイベントを企画されています。わたしもScoobを作っているチーム「ナナカラム」に所属していますが、チームでの活動内容がとても興味深く懇親会でいろいろお話を伺えて参考になりました。
あと、懇親会で坂野さんにポートフォリオを見てもらう列が出来てすごい熱気を感じました。果たしてweb系でここまでの熱気になるだろうか…わたしも持参したもののとても近づけない作品ばかりでソッとかばんに…
「好きなことを仕事にする」というのはこういうことだと改めて感じた日になりました。当日お話ししてくださった皆さんもありがとうございました、ひとり参加でしたが、とてもとても楽しかったです。